行動ターゲティングはウエブページの閲覧履歴に基づいて、広告を配信する仕組みが代表とされていますが、 それだけが行動ターゲティングの本質ではありません。 本来、生活者をターゲティングするのであれば、生活者の現在の関心事を捉えることも必要です。
以下はある男性の例です。
Aさんは車が趣味です。普段、休日の夜は車のサイトを閲覧したり、SNSサイトで情報を交換しています。 ここ1ヶ月は長女(小学校4年生)が中学受験のためにいい進学塾はないかと思案しています。知りたいのは自宅からの通学圏内であることと実績・評判、子供に対する指導方針です。
ここで重要なポイントは生活者の嗜好・関心事は時間の経過やその時々で変化するといくことです。 今のAさんに対しては車の広告ではなくて、進学塾に対する広告や情報を提供すると効果的なのは明白です。 (しかし、進学塾を決定した後はまた車関係のサイト閲覧に戻るでしょう。)
この例のように、本人の嗜好でないことも、その時点においては重要な関心事となります。現在と過去(履歴)から最適なターゲティングを行うことがこれからの行動ターゲティングには求められます。
忘れてはならないのが、配信数やクリック数(率)だけでは本当の効果がわからないということです。 クロスメディアの考察でも触れましたが、インターネットには効果測定ができるという大きなメリットがあります。
行動ターゲティング配信の効果測定は広告主にとって、
を数値で測ることが重要です。
ここ数年でウエブサイトの測定で高まっているのがポストインプレッション、ポストクリック測定の重要性です。 これまでは単純に広告でサイトに誘導→コンバージョンで効果を計っていましたが、AISASモデルで実証されている 生活者の行動パターンの多様化に伴い、どれだけ生活者とコミュニケーションが取れたかが重要になってきています。 (エンゲージメントを数値化する) 行動ターゲティング広告で誘導した後にどれだけ生活者とコミュニケーションが取れたかが、これからの ウエブマーケティングの重要な指標のひとつになるでしょう。
ポストインプレッション・ポストクリック効果を測定するためには広告からの流入データだけではなく、 直接アクセスや、他サイト、自然検索での流入およびコンバージョンを含めて測定すべきです。 なぜなら、再訪問時に広告からサイトへ流入するとは限らないからです。
また、ポストクリックデータは行動ターゲティングの精度向上やセグメント化を形成する上で有効なデータになるでしょう。
どのような手法をとるにしても、行動ターゲティングは生活者を特定することが前提条件となっています。 「行動ターゲティング」にはどうしてもプライバシー問題がついて回ります。 個人情報そのものとは結びつけることなくても、運営会社にはユーザの情報を守るといった意識・姿勢が求められます。 生活者とコミュニケーションをとるための行動ターゲティングであって欲しいものです。
すでに興味を失っているにもかかわらず、同じ広告が意図的に表示されると生活者は不満やストレスを感じる可能性があります。 このあたりの生活者の心理を考慮したフリークエンシー・コントロール(配信頻度のコントロール)が必要です。
いかに優れた行動ターゲティングシステムが的確に広告を表示したとしても、広告のクリエィティブ自体に訴求力がないと、効果も下がってしまいます。 生活者の意図に合わせたシステムであれば、あるほどクリエィティブの重要性が高まると思われます。 優秀なクリエィティブを創造できる人材の育成・確保が各社これからの課題です。
行動ターゲティングはウエブサイトが中心ですが、インターネットとTVの融合、携帯端末の進化、iPhoneに代表されるように、デジタルコンテンツは様々なデバイスで閲覧が可能になるでしょう。 その際の広告や情報サービスに行動ターゲティング技術が応用された形で生活者に「提案」「訴求」するようになるでしょう。将来は「行動ターゲティング」という言葉を特別に扱うことはないかも知れません。
行動ターゲティング広告はウエブサイトの集客方法の重要な手法になりつつあります。 広告で集客した直後に生活者が欲する情報を記述したコンテンツを表示・誘導するLPO・リコメンデーション、 それらの効果を串刺しで評価・測定できるサービス(システム)が提供されることが望まれます。
従来は広告は広告効果測定ツール、ランディングページ最適化にLPOツール、サイト内分析はサイト内分析用のツール、売上管理は売上分析システムと単独のサービスとして提供されることが多いと思われますが、これからはこれらのサービスを統合・データ連携する事が求められるでしょう。