今回からは「レコメンドウエアハウス®」について連載を開始します。
この連載ではインターネットにおける「レコメンド」「CRM」「データウエアハウス」について以下のトピックスを取り上げていきます。
レコメンデーションとは「お薦め」機能のことです。 インターネットの世界では急速にレコメンドが普及してきています。 レコメンドといえば、アマゾン社に代表されるECサイトでのイメージが非常に強いのですが、ECサイト以外でもレコメンデーションは広がりつつあります。 「レコメンデーション」「CRM」「データウエアハウス」は密接な関係があります。特に顧客中心のアプローチにはこの3つの概念・テクノロジーは重要です。 この連載では「レコメンド」と「データウエアハウス」が融合した新しい概念である「レコメンドウエアハウス®」について考察していきます。
リアルの世界ではカリスマと呼ばれる店員はその記憶力と洞察力を駆使して、 顧客(見込み顧客含む)の過去の購買履歴、現在の表情・会話から薦める商品を決めています。 しかし、インターネットの世界では店員(ウエブサイト)は顧客(訪問者)の表情や今、考えていることや、感情を推し量ることはできません (ただし、2009年時点ではですが)。 しかし、インターネットでは訪問者のアクセスデータ(購入含む)を記録することができます。 これがインターネットをマーケティングに活用できるようになった大きな要因です。
インターネットにおけるマーケティングは黎明期である1980年後半から2000年頃までは 「マスマーケティング」が主な形態でした。 Webサイトは情報を一方向的に伝える形態(企業→生活者)が主流であり、 すべての人に対して同じWebページを閲覧してもらい、同じコンテンツが常に表示されていました。 それは当時では普通のことでした。
そんな中、アマゾンドットコム社はこのインターネットの利点と「OneToOneマーケティング」「CRM」「データウエアハウス」の 概念をいち早く取り入れ、インターネットにおける「レコメンデーション」モデルを確立させ、 競合との差別化を図り、大きく成長しました。
下記はアマゾンドッドコム社の代名詞とも言えるレコメンド機能です。
【代表的なレコメンド : この商品を買っている人はこの商品も買っています】
最近では、あえて「お薦め」していますと訪問者にアピールするのではなく、 さりげなくレコメンドを実装しているウエブサイトも増えてきました。
画面上に「お薦め」であることが表示されていなくても、 検索した商品や、選択した商品の画面の横や、下の領域に 関連する商品や、色違い、組み合わせが表示されたり、 レストランを探している場合に、地域や予算、雰囲気など選択して いくとランキング形式でレストランを表示したり、 今週のTOP10などのランキングもレコメンドといえるでしょう。
あまり取り上げられることはありませんが、グーグル社に代表される検索連動型広告も「レコメンド」と言えます。 訪問者が入力したキーワードに関連するランキングと広告(キーワードにマッチする)を推薦しています。 検索連動型広告は「恣意的」「意図的」なレコメンドとして捉えることができます。
マーケティングの世界では以前から顧客データベースの属性に基づいて、セグメンテーション(グループ化)して DMを発送して、といったマスアプローチが有効とされてきました。 ある年代だから、性別だからといって特定の商品を好むはずだといった定性的なデータに基づくマーケティングは過去のものになりつつあります。 現在は価値観・ライフスタイルの多様化により人々の嗜好を単純な属性(性別・年代)などから推し量れなくなってきています。
それでも、ある嗜好や傾向にある人は同じ傾向を示す可能性があります。 インターネットにおけるレコメンデーションは、属性によって固定的に嗜好や関心を推測するのではなく、 ウエブサイトへのアクセス履歴やアクション(購入、申し込み、投票)を利用することにより、行動パターンや、商品やコンテンツの関連性から お薦めを決定する仕組みです。
インターネットの普及により、膨大な商品や情報を検索、情報収集できるようになっています。 便利になった反面、情報が多すぎて、自分にあった情報を探すのは難しくなっています。 数十個の商品から訪問者の関心事にあった商品を数個推薦するのは難しくはありませんが、 100以上、数千、数万以上の商品やコンテンツからその人に合った情報をレコメンドするためには コンピュータによる仕組みが必要です。
【レコメンド】
インターネットでは訪問者のアクセス履歴と購入データを紐付けることができます。 このデータを利用してレコメンデーションすることにより、成果を上げることができるのです。
一方、ウエブサイトのデザインには決まりがありません。 ナビゲーションメニューの表示場所や、デザイン、どこにどの商品が表示されるかどうかはウエブサイトによって 異なります。 したがって、訪問者の関心に合わせた商品や情報が見える範囲(ファーストビュー)にないと 訪問者は立ち去ってしまいます。
最近のウエブサイトではサイト内検索や商品検索機能が充実させていますが、すべての訪問者が ウエブ運営側の想定どおり、操作ができるとは限りません。検索したが、思い通りの商品が見つからないと、そこで検索を止めてしまいます。
会員制サイトではログインした訪問者には顧客登録時の情報を利用してレコメンドすることは可能です。 しかし、ログインする前の顧客や、会員登録していない訪問者や見込み客に対してレコメンドすることができません。
したがって、どこでどのようにレコメンドを行うか?は非常に重要なポイントとなります。
このように、アクセス履歴と購入商品が結びつけることができれば、
商品間の関連性と商品を通じて類似した嗜好を持つ人と人の関係性を得ることができるようになります。
レコメンドできる内容は商品だけではなく、情報コンテンツでも可能です。 (コンテンツを商品に置き換えればいいわけです) コンテンツ間の関係性やコンテンツと関連する商品をレコメンドするなどが考えられます。
また、レコメンドする商品や情報を上手にフィルタすることにより、ニッチながらある層には人気のある商品をレコメンドする といったロングテール的な利用方法もあります。