第2回 測定を開始する前に(2)

コンバージョンの計測方法

コンバージョンに対する考え方も測定ツールによって異なる場合があります。 次のケースを考えてみましょう。

転職サイトが5/1からYahooにバナー広告を出稿したとします。

  • 5/1にあるユーザがYahooのバナー広告から流入してその日はサイト内を閲覧して退出
  • 5/3にはGoogleからキーワード「転職」で検索してサイト内へ流入。ブラウザにブックマークして退出
  • 5/5にブックマークからサイトへ流入して会員登録を完了

複数日にまたがったコンバージョンの計測

この場合、測定ツールの計測方法によって結果が異なります。

1)同一セッション内でコンバージョンまで到達した場合の流入元だけをコンバージョンの対象として計測する
→コンバージョンの認知媒体は「直接アクセス(ブックマーク)」

2)セッションと関係なく、一定期間内にコンバージョンした場合、そのユーザの期間内の最初の流入元を対象とする
→コンバージョンの認知媒体は 「Yahooバナー広告」

3)セッションと関係なく、一定期間内にコンバージョンした場合、そのユーザの期間内のすべての流入元を対象とする
→コンバージョンの認知媒体は 「Yahooバナー広告」と「Googleキーワード 転職」

上記のような動きは当社の経験上、どのウエブサイトでも発生しています。なかにはコンバージョンするユーザのきっかけとなった 訪問は当日ではなくて、3日から2週間前が50パーセント以上を占めるサイトもあります。

最近では広告を見た後や広告をクリックした後のユーザの行動を把握するといったポストインプレッション/ポストクリック効果の測定が重要視されてきています。 ポストインプレッション/ポストクリック効果の測定はセッション履歴の管理方法の優劣(測定ツールの設計思想)で差があります。 ポストインプレッション/ポストクリック効果がどこまで測定できるかは、これからのウエブサイト分析の肝となる部分ですので、よく覚えておきましょう。

ご利用されている測定ツールやサービスのPV、セッション、コンバージョンの計測仕様はどうでしょうか? わからない場合はベンダーや代理店に確認しておきましょう。

データ取得方法の影響を理解する

データの取得方式には大きく分けて

  • タグ方式(Webビーコン)
  • ログ方式
  • パケットキャプチャ方式

があります。データ取得の概要を以下に示します。

データ取得方式

一般的にそれぞれ長所と短所があります。

タグ方式(Webビーコン):長所
  • クッキーを測定ツール側で独自に発行・管理しているので、ユーザ計測が正確。
  • リアルタイムにデータが取得できる(表示できる測定ツールとできない測定ツールあり)
  • ブラウザのキャッシュや[戻る]ボタンのアクセスも取得できるので、ページ遷移(経路)が正確に把握できる。
  • ASP方式が多いので、すぐに利用を開始することができる。
  • 専用サーバーが不要
  • Flashイベントの追跡が可能(測定ツールに依存)
タグ方式(Webビーコン):短所
  • タグを貼り付ける必要がある。
  • データの取得はタグを貼り付けた後から開始。
  • JavaScriptをオフにしているブラウザではデータが取得できない場合がある。
  • ログ方式:長所
  • 過去のデータも再集計が可能
  • 画像など、PVに関係ないファイルのカウントも可能。
  • HTTPステータスコード(404,500など)のカウントが可能
  • アクセスデータは自社ネットワーク内で管理できる
  • ログ方式:短所
  • ウエブサイト側でクッキーを発行していないとユニークユーザの識別が困難(PCサイトの場合)
  • ブラウザでキャッシュされてウエブサーバーにリクエストが発行されない場合はデータは取得できない。
  • ウエブサーバーが複数の場合やアクセス数が膨大なサイトの場合、マージ・集計に時間・管理コストがかかる
  • リアルタイム分析は困難。
  • 専用サーバーが必要な場合がある。
  • パケットキャプチャ方式:長所
  • リアルタイムにデータが取得できる
  • ミラーポートから一括して複数のWebサーバーのデータが取得できる。
  • タグを貼り付ける必要がない
  • URLパラメータ以外にHTTPヘッダや、ボディ内の値が取得(できる測定ツールもある)
  • 携帯サイトの場合、ユニークユーザの識別ができる。
  • HTTPステータスコード(404,500など)のカウントが可能(測定ツールに依存)
  • アクセスデータは自社ネットワーク内で管理できる
  • パケットキャプチャ方式:短所
  • ウエブサイト側でクッキーを発行していないとユニークユーザの識別が困難(PCサイトの場合)
  • ミラーポートで取得できるポイント以外のデータは取得できない。
  • SSLページを取得するためにはSSLアクセラレータ等を経由して非暗号化した後でデコードされたポイントでデータを取得する必要がある。
  • 導入時にネットワークを変更しなければならない場合もある。
  • ブラウザでキャッシュされてウエブサーバーにリクエストが発行されない場合はデータは取得できない。
  • ハードウエアコストがかかる。
  • 専用サーバーが必要。
  • 上記の他にリダイレクト方式があります。

    測定ツールによってはログ+タグ方式や、タグ+パケット型のハイブリッド型でデータを収集できるものもあります。

    本当に長所?短所?

    タグ方式ではこれまではページの貼り付け作業がネックと言われてきましたが、今はCMSツール、WebオーサリングツールやPHP,ASP,CGI,Rubyに代表されるスクリプト言語によるサイト開発が当たり前になってきましたので、簡単に生成することができるため、利用のネックになることはあまりないようです。

    また、これまでPOSTデータの取得はパケットキャプチャ方式でなければ困難とされてきましたが、タグ方式でもスクリプト言語の浸透により、動的にタグを生成することが簡単になり、対応できるようになってきています。 例えば、効果的な使い方としては購入時の注文番号や、顧客属性などのWebアプリケーション側で把握している情報をコンバージョン属性データとして効果測定レポート(またはデータダウンロード)するなどの用途があります。 タグ型の場合も、ページ毎に異なるタグ(ページIDを振ったタグ)を貼り付けるタイプや、共通のタイプ、コンバージョンページのみ特別なタグを貼るタイプがありますので、確認しておきましょう。 パケットキャプチャ方式を採用していても、実際はいったんファイルに出力して定期的にロード・集計するタイプの測定ツールもあります。この場合はリアルタイム性は失われますので、パケットキャプチャ方式だからリアルタイムとは 限りません。

    リアルタイムが必要な場面

    リアルタイムが特徴の測定ツールもありますが、本当に自社のウエブサイトの測定において、リアルタイムレポートが必要とされるかを確認しましょう。すべての業種・ウエブサイトでリアルタイムなレポートが求められるわけではありませんし、すべての測定レポートでリアルタイムが必要とは限りません。(一般的にはPVがレポートできれば十分でしょう) リアルタイムの一番の有効性は、設定が有効かどうかの確認がすぐにできるという点かもしれません。

    また、測定ツールを利用する前にライセンス・課金体系(買い取りなのか、月額課金か)、初期費用 オプション費用・保守費用を確認しておく必要があります。

    データ取得方式と関連して確認しておく必要がある項目として以下が挙げられます。

    1)ウエブサイト側でクッキーを発行しているか?
    2)フレームを使っているか?測定ツールはフレームの除外に対応できるか?
    3)Flash内のイベント計測をおこなうか?行わないか?測定ツールは対応しているか?
    4)動的ページがあるか?採用する測定ツールは動的ページの計測に対応しているか?
    5)コンテンツがCDN経由(Akamaiなど)経由で提供されていないか?

    データの取得方式と測定ツールの仕様(セッション管理方法とコンバージョン)は合わせて確認しましょう。

    重要な指標の作成

    何を測定するのか、計測する数値の意味が整理できたら、重要な指標をつくりましょう。 以下はどの業種でも共通で重要な項目です。

    • 広告(リスティング含む)のクリック数(流入数)とコンバージョン
    • コンバージョン時の流入元(検索エンジン、流入元サイト、キーワード、広告)
    • ページアクセスランキングと入退出ページ
    • 検索キーワード上位20、検索エンジンのシェア
    • 流入元(外部サイト:検索エンジンを除く)の上位20
    • 期間内のユニークユーザ数
    • 日別・月別のPVとユーザ数、訪問回数の推移
    • 再訪問ユーザの割合
    • 重要なランディングページの直帰率

    PV数が最重要項目?

    これまでウエブの測定には必ずPVが最重要項目とされてきました。もちろん重要な指標には違いないのですが、PVが増えたからといって、必ずしもウエブサイトの効果があがったかどうかは言い切れない場合があります。 特に検索連動型広告の普及により、出稿・管理が容易になったこともあり、キーワードを大量に出稿する傾向にあります。 最近では数万ものキーワードを一度に出稿する企業も珍しくありません。 大量出稿の結果、PV数は増えたものの、広告のクリック先(ランディングページ)のコンテンツ内容とキーワードが一致していないため、 ユーザの意図と異なってしまい、すぐにサイトを離脱する確率(直帰率)が増えてしまったケースも多々あるようです。 直帰率を改善する手段としてLPO(ランディングページ最適化)が有効とされています。LPOについてはこの連載中で別途に説明します。

    PV数、訪問回数は劇的に増加しても、コンバージョン数が増加しなければウエブサイトへのトラフィックが増えただけになりますので、 コンバージョン数の増減も同時に確認しましょう。

    測定の開始

    不要なデータの除外が意図どおりできているか確認しましょう。

    • 検索エンジンロボットの除外
    • 社内からのアクセスの除外
    •   事前にIPアドレスを調べておきましょう。
    • 拡張子による除外
    • 特定のディレクトリ配下やファイルの除外

    測定開始後の確認は重要です。

    PV数、ユーザ数、流入元、広告からの流入の計測確認を行いましょう。 レポートに反映されるタイミングについてもベンダーに確認しておきましょう。 計測開始後のベンダーのサポート(レスポンスの良さ、回答の正確さ)も合わせて確認しておきましょう。 特に最初の一ヶ月のデータは今後の指標にもなりますので、よく確認しておきましょう。

    第1回のまとめ

    第1回のまとめ
    ・何を測定するのか?
    何を計測するのか明確にしておきましょう。
    ・用語の意味
    計測ツールの用語の意味、ユーザ、セッションの仕様を把握しておきましょう。
    ・データ取得方式が与える影響
    計測ツールのデータ取得方式を理解し、長所・短所、自社のサイトとの相性を確認しておきましょう。
    ・重要な指標
    計測を開始した後に備えて、指標とする評価項目を決定しましょう。
    ・不要なデータの除外
    意外と見落としがちなのが、計測に不要なデータの除外です。しっかり確認しておきましょう。

    第1回は測定を開始する前の注意事項や知っておきたい事柄について説明しました。

    特に用語と利用している測定ツールの仕様の理解(セッション管理方法とコンバージョン)は重要です。 その後の測定データの理解に大きく影響しますので、しっかり把握しておきましょう。