セグメンテーションという悪弊


似顔絵 アクティブコアの小畑です。

私が最近読んだ本の中に『セグメンテーションという悪弊』という論文が掲載されていました。(原文タイトルは『Marketing Malpractice: The Cause and the Cure』)
この論文は2015年にハーバード・ビジネス・スクールのクリステンセン教授が書いたものですが、同教授らが執筆し昨年2017年に出版された『ジョブ理論』の基となっているようです。
『ジョブ理論』は既に読まれた方も多いのではないでしょうか?

今回は、『セグメンテーションという悪弊』というタイトルが印象的でしたので、この論文についてお話をしたいと思います。

セグメンテーションの何が悪弊か?

マーケティングの基本的な手法としてSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)がありますが、従来から次のようなセグメンテーションが行われてきました。

  • A商品を買った人、といった製品軸による分類
  • 30代女性、といったデモグラフィックによる分類
  • 大・中・小企業、といった企業規模による分類

そして、このセグメントを代表する顧客ニーズを洗い出しターゲティングしていくわけですが、上記のようなセグメンテーションをクリステンセン教授は「悪弊」であると言っています。

例えば、30代女性というセグメントに対して需要がありそうな商品開発や訴求をしたとしても、マーケターとしては誰が買いそうかは想像もできず、 何%くらいの人が買いそうかを確率で示すのが限界で、その先の施策や商品開発にも活かせないためです。

ミルクシェークを買う人の「ジョブ」

ここでクリステンセン教授は、セグメンテーションや商品開発を考える上では、顧客の実生活においてどのような「ジョブ」が発生するかを理解することが重要だと言っています。 「ジョブ」とは顧客が解決したい用事や仕事のことで、それを処理するために顧客は商品を「雇用」すると言うのです。

この「ジョブ」に関して、書籍『ジョブ理論』の方でも同様に紹介されている例ですが、あるファーストフード店のミルクシェークの例が取り挙げられています。

この店ではミルクシェークの売上を伸ばすために、まず「ミルクシェークを買う人」というセグメントを設定し、さらに購入頻度や顧客属性での細分化を試みました。 そしてそのプロファイルに一致する消費者を集めて、ミルクシェークを濃くする、チョコレート味を強める、値段を下げるなどの工夫で満足度が高まるかを評価し商品改良を行いました。 ところが、商品改良を行ったものの売り上げに何のインパクトも与えなかったのです。

別の調査スタッフは顧客のジョブを理解するため、現地で早朝から一日中観察しました。 その結果、一人で早朝来店し、他のものは購入せず、ミルクシェークを自分の車の中で飲むというパターンを多く見付けることができたのです。 この顧客になぜミルクシェークを買うのかをインタビューをしたところ、「マイカー通勤で長時間運転するのが退屈で気を紛らわせる何かが必要だった」と言います。 他にも「運転中なので手を汚したくない」「昼食までのほどほどの空腹を満たしたい」「ある程度長持ちするもの」などの 理由があり、このような「ジョブ」を処理するために顧客はミルクシェークを「雇用」していたのです。

「ジョブ」を理解することによる変化

「ジョブ」を焦点に絞ることで、STPにも変化が生じ、新たな商品市場が見えてきます。 例えば先ほどのミルクシェークのケースでは、「ミルクシェークを買う人」というセグメントではなく「早朝、通勤の車の中で気を紛らわせる何かが必要な人」というセグメントが生まれます。
このセグメントに対して売上を上げるための方法としては、長時間の運転に耐えられるようにミルクシェークをいっそう濃厚にして長持ちさせる、ドライブスルーで待たせることの無いよう販売効率を改善する、といった方法が考えられます。
また早朝の車の中で口にするものとしては他にもバナナやベーグルなどもあり、これらが新たにライバルとして挙がってくるため、自社ブランドのポジショニングにも影響します。
このように、従来のセグメンテーションでは見えなかったことが、「ジョブ」を理解することで見えてくるのです。

最後に

『セグメンテーションという悪弊』の中で、「広告でブランディングはできない。しかしながら、広告で自社ブランドが特定のジョブに適していることは伝えることができる。」という一文があります。

今回の「ジョブ」という考え方は商品開発や販売戦略寄りの内容にも見えますが、 実際は広告・メール・Webコンテンツでどのような訴求をするかを考える際にも非常に有用ではないかと思います。

私は日々、アクティブコアマーケティングクラウドをご利用のお客様のサポートをさせて頂いておりますが、 今後より一層お客様の「ジョブ」を理解して、末永く継続して「雇用」して頂けるようなサポートができればと思い、今回記事にさせて頂きました。

【参考書籍】
『マーケティングの教科書 ― ハーバード・ビジネス・レビュー 戦略マーケティング論文ベスト10』
(ハーバード・ビジネス・レビュー編集部:2017年、ダイヤモンド社)